熊本県菊池市龍門の小木地区。八方ヶ岳に囲まれた、標高250mに冨田榮一さんの棚田があります。
八方ヶ岳は菊池市の北方、菊鹿町に跨る火山で、八方から眺めても一様な形であることから名づけられた山です。花崗岩と古琉球火山帯に属する安山岩が山を覆い、岩を滑るように清流が流れています。
冨田さんの棚田は、阿蘇溶岩を浸食した原生林の茂る菊池渓谷の源流、菊池川水系迫間川の更に上流である小木川の最上流にあります。小木川には、高城山から長い年月かけて湧き出た美しい湧水が流れていますが、田んぼにはこの水だけが流れ込みます。冨田さんの棚田の上には民家がなく、生活排水が一切入り込みません。
菊池市七城町の砂田米は、砂地で育ったおいしいお米であるがゆえに、「天下第一の米」と言われ、将軍家や皇室への献上米としての歴史があります。この小木地区も、田んぼに砂が混ざった独特の土壌で、水はけが良く、山が育んだミネラル豊富な湧水にも恵まれ、お米作りにとても適した土壌です。
「小さい頃から、うちで作ったおいしいお米を食べて育っとるけん、どこのお米を食べてもそんなうまいと思わん。」冨田さんは、こう話してくれました。