サスティナブルコラム
ミツバチが直面している危機と原因について
- ミツバチの役割
ミツバチは花の蜜を集める一方で、作物を実らせるための受粉も行っています。2011年の国連環境計画(UNEP)で「世界の食料の9割を占める100種類の作物種のうち、7割はハチが受粉を媒介している」と報告があったように、ミツバチは私たちの食生活と深く結びついているのです。
<ミツバチの受粉で実る作物>
リンゴ、アーモンド、アスパラガス、ブラックベリー、ブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、カカオ、ニンジン、カリフラワー、セロリ、サクランボ、ナス、ニンニク、タマネギ、カボチャ、スイカなどミツバチのように体に花粉をつけて運ぶ動物は「送粉者(ポリネーター)」と呼ばれ、生態系が継続的に機能していく上で欠かせない存在です。送粉者のほとんどはハナバチ、ハエ、蝶、蛾、甲虫などの昆虫です。
- 世界中で姿を消しているミツバチ
私たちの生活を陰で支えているミツバチが、世界中で急速に姿を消しています。アメリカでは、2006年秋から2007年にかけて、大量のミツバチが突然失踪する現象が起きました。この現象は「蜂群崩壊症候群(CCD)」と呼ばれ、ヨーロッパにおいても小規模ではありますがスイスやドイツ、ベルギー、フランスなどでも同様の現象が報告されています。
- 減少の原因とは
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ミツバチ減少の原因には諸説あり、特定されておらず、さまざまな原因が複合的に影響を与えていると言われています。ミツバチの過労働・環境の変化によるストレス説や、ダニが媒介する病原菌が原因だとする説、栄養失調説などがあります。中でも有力なのは、ネオニコチノイド系農薬が関係しているのではないかという説です。
- 世界で規制の動きが広まるネオニコチノイド系農薬
ミツバチの数が減少すると作物の受粉に影響を与え、世界の食糧生産に大きな影響を及ぼすため、ヨーロッパでは、2018年4月にEUがミツバチへの毒性が強い3種のネオニコチノイド系農薬をほぼすべての用途で使用禁止することを決定(ただし植え付けから収穫まで温室内で栽培する場合を除く)。フランスでは、2018年からネオニコチノイド系農薬の全種類が使用禁止になりました。また、2019年には、アメリカでもネオニコチノイド系農薬を使った農薬製品12種類の登録(承認)が取り消されました。この12種類には、日本でも広く使われているネオニコチノイド系農薬のクロチアニジンとチアクロプリドを使った製品も含まれます。
- 日本ではミツバチの被害の多くは田んぼで発生
欧米ではミツバチの減少に伴い上記のような対策を講じている一方、日本ではどのような動きがあるのでしょうか。農林水産省は、日本では蜂群崩壊症候群(CCD)の現象は見られていないと発表しつつも、農薬とミツバチの関連性を把握するために、2013年度から2015年度にかけてミツバチの被害事例について詳細な調査を行っています。2013年度には69件、2014年度には79件、2015年度には50件の被害報告があったと発表。専門家によると、農薬によるミツバチの被害の特徴は、巣門(巣箱の入り口)の前に死虫が観察されることであり、2013年度から2015年度までの被害報告では、巣の周辺で採取される1巣箱当たりの死虫数が1,000~2,000匹という比較的小規模な事例が多くを占めていました。
<農林水産省の情報収集により把握された事項>
- 被害の発生は水稲のカメムシ防除の時期に多い
- 巣箱の周辺で採取されたミツバチは殺虫剤を直接浴びた可能性が高い
これらの報告を受けて、農林水産省ではミツバチの被害を減らすため、水稲のカメムシを防除する時期(7月~9月頃)には、対策の実施を徹底し、都道府県に対し注意喚起を行うと発表しています。
アムリターラでは九州にある「自社田んぼ」でお米を栽培
アムリターラでは10年以上に渡り、自社田んぼで自然栽培米の栽培に取り組み、農薬や肥料を使わず、ありのままの自然環境の中で栽培しています。田んぼで殺虫剤や除草剤といった農薬を使わないと、イトミミズやカエル、カタツムリ、トンボ、蝶、ミツバチなどの生物が周辺に増え、それらの虫などを捕食する鳥類も訪れるようになります。飛来した鳥が雑草の種子を食べ、ミミズが泥を押し上げることで除草が楽になり、生物の糞が発酵して土に豊富な栄養分が宿ることで、人間をはじめとするあらゆる生物にとても良い環境となるのです。田んぼは、人と自然がより良く循環する場所であると考えています。
【参考資料】
農林水産省