サスティナブルコラム
食品添加物をどうとらえるか
- 食品添加物の歴史
人は昔から、岩塩や香辛料を使って食品の保存や美しく見せる工夫をしてきました。豆腐をつくるための「にがり」は1000年以上も前に中国から伝えられたと言われています。明治時代に入ると新たな食材や調理法がもたらされ、やがて食品による事故を防止するために1947年(昭和22年)、厚生省(現在の厚労省)により食品衛生法が公布されます。これにより「食品添加物」という言葉が誕生し、広く使われるようになりました。
- 日本の食品添加物は1500種以上
食品衛生法の施行当時、食品添加物は安全が確認された60種類のみでしたが、現在では厚生労働省が指定する指定添加物466品目のほか、昔から使用されていて安全性に問題がないと認められている既存添加物357品目、植物や動物などが原料の天然香料が約600品目、食品が添加物として使用されているものが約100品目と、1500以上の食品添加物が使用されています。
- 食品添加物の定義
食品衛生法の第4条第2項では次のように定義されています。
「添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するもの」
代表的な添加物と使い方
種類 目的と効果 食品添加物の例 うま味調味料 うま味、コク味の付与 たん白加水分解物、酵母エキス、グルタミン酸ナトリウム、アミノ酸 着色料 食品を着色し、色調を調整する カラメル色素、クチナシ黄色素、コチニール色素 保存料 かびや細菌などの発育を抑制、食品の保存性を向上 ソルビン酸、しらこたん白抽出物 増粘剤、安定剤、ゲル化剤、結着補強剤 食品に滑らかな感じや粘り気を与え、安定性を向上 ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、リン酸塩 酸化防止剤 褐変、変色、風味の劣化などを防止 L-アスコルビン酸 発色剤 ハム・ソーセージなどの色調・風味を改善 亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウム 漂白剤 食品を漂白し、白く、きれいにする 亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム 防かび剤 輸入柑橘類などのかびの発生を防止 オルトフェニルフェノール 加工肉や市販のお総菜、お弁当には、うま味調味料、着色料、増粘剤、発色剤、酸化防止剤、保存料が使用されているものが多く、ケーキなどのデザート類には、イーストフード、保存料、乳化剤、増粘多糖類、pH調整剤、酸味料、着色料、香料などが使用されているものが多いです。しょうゆ・味噌・ソースなどの調味料にも食品添加物が使われていることがあります。
具体的な例を挙げると、ハムやソーセージなどの加工肉には、うま味調味料であるグルタミン酸ナトリウムやアミノ酸、結着補強剤としてリン酸塩、発色剤として亜硝酸ナトリウムや硝酸カリウム、酸化防止剤としてL-アスコルビン酸、保存料としてソルビン酸等が使用されていることがあります。
安全性の担保
食品安全委員会の評価により使用が認められます。具体的には、動物を用いた毒性試験のデータに基づき、食品添加物ひとつひとつの「一日摂取許容量」が設定されます。表示ルール
使用した全ての食品添加物を「物質名」で食品に表示する義務がありますが、下記のように、一部例外があります。・一括表示
複数の添加物の組合せで効果を発揮することが多く、全て表示する必要性が低いと考えられる添加物や、食品中にも通常存在する成分と同じ添加物は、まとめて表示されます。香料や乳化剤、pH調整剤、膨張剤などがこれにあたります。例えば食品の原材料名に「膨張剤」と記載されていた場合、どんな膨張剤がいくつ組み合わさっているかは一見して判別できません。・キャリーオーバー
食品添加物が効果を発揮する量より少ない量しか含まれていないものや、最終的に食品に残っていないものに関しては表示しなくてもよいことになっています。例えば缶詰のみかんの薄皮をむく時に使用される塩酸などは後者に該当します。また、表示に関する最新のニュースでは、2020年の5月、消費者委員会の食品表示部会が食品添加物の「人工」「合成」表示の削除を了承したことがあげられます。「人工」「合成」の文言があると購入を避ける消費者がいるため、誤認防止のための削除ということです。(7月に施行、2022年3月まで経過措置。)
- 食品添加物と私たちの暮らし
食品添加物には食の多様化を叶えてきたという側面もあり、その恩恵に一度もあずかっていないという人はほとんどいないことでしょう。そのメリット・デメリットを理解し、自分なりの選択基準を持ち、食生活を豊かに暮らしていくことが何より大切です。例えば海外と日本の違いもよく話題になりますが、食への理解を深めるために、フランスなどのオーガニック先進国と日本の現状を比べてみるといった視点も、今後のライフスタイルの参考になるのではないかと思います。