サスティナブルコラム
小さくとも大きな命。「固定種」を守る!
新型コロナウイルスによる外出自粛がきっかけで家庭菜園に興味を持ったり、今年5月の「種苗法改正案」見送りの動きを目にして、苗や種について改めて考える人が増えた今だからこそ、種を取り巻く現状と、アムリターラが種に込める思いをご紹介します。
- 未来へ繋がる「固定種」
ひと言に「種」といっても、その種類は実にさまざま。種を育てる人間が使いやすいように改良を重ね、発芽時の病害防除などのために、殺菌剤や着色剤を加えた溶液でコーティングした種すら存在します。
また、遺伝子組み換えの種も開発され、理論上では蛍の遺伝子を入れたトルコ桔梗やヒラメの遺伝子を入れたイチゴやトマトなど、種の壁を越えた自然界では起こりえないことも可能になり得ます。そんな中、親から子、子から孫へと命を繋いでいる「固定種」と呼ばれる種があります。
- 「固定種」とは?
■ 固定種
親から子・子から孫へと代々同じ形質が受け継がれている種で、遺伝的に安定した種のこと。固定種は親と同じ形質を持った子ができますが、これは固定種の大きな特徴の一つで、固定種が命繋がる種と言われる所以です。固定種の一種である「在来種」は、自然な育種をしていく過程で、その土地ならではの形質や美味しさを有した種のことです。固定種・在来種ともに、作物のサイズや育つスピードにバラつきがあるため、流通が安定しないものが多いです。
これらの種は「自家採種」を繰り返すことで受け継がれてきました。※「自家採種」とは、自ら育てた作物から種子を採種することです。自家採種を繰り返すことで、選抜・淘汰され、その地の気候や土 壌に適した種になります。
■ 一般的に流通している種は「F1種」
現在、店頭に並ぶ野菜のほとんどは「F1種」という種から育ったものです。
F1種とは、異なる品種を掛け合わせた一代交配種のこと。形や大きさが均一で、収穫量も多く、大量生産に向いていることから、農家さんに最も多く使用されている種です。ただし、優秀な性質は一代限りのため、農家さんは毎年種を購入する必要があります。自然食品店やオーガニックスーパーの中には、野菜の値段や商品説明のところに「F1種」や「固定種(在来種)」と表示しているお店もあります。お買い物の際に、ぜひ意識してみてください。
- 失われつつある種子の多様性
アムリターラが非常に危機を感じている問題です。自然の中で交雑を繰り返しながら生まれてきた固定種や在来種が、現在急速に失われつつあるのです。
理由はいくつかありますが、種子市場が大企業による寡占状態になったこと、農家さんの間で安定した収穫が見込めるF1種が主流になったことや自家採種は手間がかかることなどが考えられます。また、法律の改正も関係しています。地域に適応した固定種や在来種が失われることは、その土地だけの味わいを持った野菜も失われることを意味します。実際に、過去100年の間に栽培していた品種の9割ほどが消失しています。これは、あるべき自然の姿とはほど遠く、生物多様性が失われてしまいます。
また、地域に根ざした種は、自然災害の発生や病害が流行した場合に乗り越えられる生命力も秘めています。生物多様性が私たちにもたらしてくれる自然の恵みは想像以上に大きいのです。
- 生物多様性こそが自然の美しい姿!アムリターラのアクション
伝統的な固定種や在来種を絶やさないために、アムリターラでは勝田小百合の自宅の畑で自家採種した種を配布しています。この種は、自然栽培の畑で約10年に渡り自家採種を繰り返している種です。命つながる種で野菜を育て、食べることの大切さを実感していただきたいと思っています。
種のプレゼントのほかに、このような活動を行っています。在来種や古来種、古い品種の植物を採用して、商品開発を行っています。 「鶯宿梅」を使用した梅干しやねり梅、「在来種の茶樹」で育った茶葉を粉末にしたお茶、「日本山ぶどう」を使用したドリンク、「旭一号」や「亀の尾」といった古い品種のお米、ハイビスカス「あかばなぁ」を使用したチーク、日本原種のバラ「ハマナス」を使用した美容液やクリームなど。
- 鶯宿梅
- ハイビスカス
- ハマナス
九州にある自社農園「アムリターラ田んぼ」にて、歴史ある古い品種のお米「穂増」の栽培に取り組んでいます。遺伝子組み換え植物由来の原料は使用しません。メインの原料でない補助的な原料でも一切使用しません。
土の中で育ち、実となり種を付け、新たな命となって土の中で生きる種は、循環型社会の理想的な存在です。命つながる固定種や在来種を守ることは、持続可能な社会を目指すアムリターラにとって大きな使命なのです。