サスティナブルコラム

滋養ドリンクとして愛され続けてきた甘酒

麹甘酒

“飲む美容液”とも呼ばれ、健康・美容に効果的な飲み物として注目を集めている「甘酒」。その歴史は非常に古く、 “日本書紀”に記されている「天甜酒(あまのたむざけ)」という飲み物がそのルーツだと言われています。平安時代には貴族の飲み物として愛され、江戸時代になると街に「甘酒売り」が登場し、夏の飲み物として庶民に親しまれていたそうです。

麹甘酒

 

甘酒には、日本酒を作る際に搾りかすとしてできる酒粕にお湯と砂糖を加えて作った「酒粕甘酒」と、米と麹を発酵させて作る「麹甘酒」の2種類がありますが、ここでは麹甘酒についてのお話をしていきます。麹甘酒の作り方は非常にシンプルで、米麹と米を混ぜてそれぞれ60℃程度の一定温度で6時間ほど置くだけです。これだけで発酵による甘みが出て、甘酒となります。

美味しい発酵食品を生み出す麹と酵素の仕事

米麹

甘酒は砂糖を使っていないのに、なぜこっくりと甘いのでしょうか?そこには“麹”の存在があります。麹とは、蒸した米や麦、大豆などに「麹菌」というカビを加えて繁殖させたもので、その麹菌が生み出す酵素が美味しい発酵食品をつくります。

米麹

 

甘酒が作られる過程では、アミラーゼという酵素がお米のデンプンをブドウ糖に分解し甘味を作り出し、プロテアーゼという酵素はお米に含まれるタンパク質をアミノ酸に分解して旨味を作り出します。このようにして、甘酒特有の味わい深い美味しさが生まれるのです。

 

薬剤処理や純粋培養された人工の麹菌と区別して、穀物に自然に生えてきた麹菌を「天然麹菌」といいます。『自然種付け法』という古くからの製法は、手間と時間がかかる上に出来上がりの量が安定せず、大量生産に向かないことから次第に廃れていき、現代では人工培養の麹菌を業者から購入して使用することが一般的となりました。

 

アムリターラの甘酒は、創業大正3年の「マルカワ味噌」さんに、昔ながらに蔵に棲む4種類の「天然蔵付き麹菌」を自家採種した玄米麹を使って作っていただいています。

発酵食品が体に嬉しい理由

発酵食品

発酵食品とは、乳酸菌や麹菌などの微生物によって食品のタンパク質や糖が分解され、別の食品に変化した物のことです。甘酒をはじめ、味噌や納豆、塩麹、醤油麹やヨーグルトも発酵食品です。それでは、発酵食品が私たちにもたらしてくれる恩恵を見ていきましょう。

発酵食品

 

食品の栄養価や“旨み”が増す

麹菌によりデンプンが分解されると甘さが増し、タンパク質が分解されると旨みの素になるグルタミン酸やイノシン酸ができます。微生物の力で素材に風味が加わるのです。また、大豆→納豆のように、発酵することにより栄養価が何倍にも増す食材もあります。

 

保存性も高まる

発酵は腐敗菌の繁殖を抑え、食べ物の保存性を高めてくれます。さらに、発酵によって生み出されたアルコールや酢酸、乳酸そのものも保存性に役立っています。

甘酒の主な栄養素・成分と働き

それでは、“飲む美容液”とまで形容される甘酒には、どんな栄養素・成分が含まれているかを見ていきましょう。

 

・コウジ菌
製品化に際して加熱殺菌されますが、その状態でもきちんと健康に役立ってくれます。
・食物繊維
食べ物の中に含まれ、人の消化酵素で消化することのできない物質。現在ではほとんどの日本人に不足していると言われています。
・オリゴ糖
2個以上の糖が結びついたもの。低エネルギーで、健康維持に役立ちます。
・ビタミンB群
私たちが生きていくために欠かせない栄養素で、ビタミンB1、B2、B6、B12など複数の種類があります。これらは、どれかひとつだけでは効果が発揮されにくいため、一緒に摂取することが望ましいとされています。
・葉酸
ビタミンB群の一つで、特に妊娠を計画している方や妊娠中の方には、普段の食事以外からの意識的な摂取が推奨されています。
・アミノ酸
人間の身体を構成している約20種類のアミノ酸のうち9種類は食事からとるべき『必須アミノ酸』ですが、甘酒は9種類の必須アミノ酸を網羅している上に、その他のアミノ酸も摂取できます。

 

以上に代表的なものを挙げました。甘酒は、古くから健康に良い飲み物とされてきましたが、そのことにはきちんとした栄養学的根拠があったのです。

玄米や雑穀の甘酒ならさらに◎

美養甘酒

白米で作られることが多い甘酒ですが、GI値や栄養価のことを考えると、玄米や雑穀の甘酒がおすすめです。雑穀は、ビタミンやミネラル、食物繊維を豊富に含んでおり、白米や胚芽米をはるかに超えるだけでなく、玄米を超える栄養素も多いです。

 

美養甘酒

 

最後に、多くの栄養素を含む甘酒といえども、約20%のブドウ糖を含んでいます。つまり飲みすぎは禁物です。1日にコップ1杯(200cc)程度を目安に、お水や豆乳などで割ってお召し上がりください。みりんやお砂糖の代わりに甘味料としてお料理に使うこともおすすめです。

参考文献:
マルカワ味噌オフィシャルサイト
「腸内細菌と健康」厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
農林水産省 消費者の部屋
http://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/1712/02.html